伝え継ぐ日本の家庭料理
肉・豆腐・麩のおかず
著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
発行:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ
◆全巻定価:49,280円(税込)全巻を購入する(田舎の本屋さん)
こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。
定価:1,760円(税込)
(内容は同じです)
かつては、肉料理は祭りやお祝いのごちそう。大勢で食べられるすき焼きなどの鍋ものが多く、鶏、豚、牛、羊、イノシシ、クジラといろいろな肉を使った料理が登場します。植物性たんぱく質が豊富な豆腐や麩も、煮しめたり卵と合わせたりすることでボリュームアップ。肉に負けない満足感のあるおかずも取り上げます。
鶏の料理
鶏は、家庭で卵をとるために飼われていた身近な家畜でした。祝いごとや祭りなどがあるとつぶして、ごちそうとしてふるまわれたのです。肉はもちろん、内臓も卵も、骨もだしをとり、丸ごと食べつくします。大勢で食べる鍋料理から煮物、刺身まで紹介します。
豚と牛の料理
豚の料理は、昔から豚を飼っていた沖縄や、外国の影響を受けてつくられるようになった神奈川や長崎などで多く見られます。牛を使った料理は大阪や兵庫など、西日本が中心です。もつやすじ肉の料理から肉がメインのごちそうまで紹介します。
羊と馬といのししの料理
羊は羊毛生産で飼われた北海道で、馬は農耕馬・軍用馬の産地に近いところでよく食べられ、いのししは山間部を中心に、秋冬の狩猟シーズンに食べられてきました。それぞれの肉が持つにおいやかたさなどを和らげ、おいしく食べるための料理が伝えられています。
くじらの料理
海の哺乳類であるくじらは、戦後の食糧難の時代、日本人の食生活を支えてくれた大事なたんぱく質源でした。日本には昔からくじらを頭から尻尾まで余すことなく使いつくす技があり、赤身肉から脂肪、尾びれなどを使った料理が登場します。
卵と牛乳の料理
かつて貴重品だった卵は、昭和30年代半ばから安価で身近な素材になりました。卵焼きや茶碗蒸しなどの定番の卵料理も東西で味つけや具が違うようです。そのほか、珍しい和風の牛乳料理と、動物性たんぱく質源である虫の料理も紹介します。
豆腐とおからの料理
ゆでたり煮たりしてかたくなった豆腐は食べごたえもボリュームも十分。湯豆腐や冷や奴で食べる豆腐のイメージとはかなり異なります。豆腐を加工したがんもどきや凍り豆腐なども、副産物であるおからも、煮物や和え物、すしにしてたっぷり食べてきました。
麩の料理
小麦粉のたんぱく質を抽出した麩は、精進料理の重要な食材です。地域それぞれに特色のある麩がつくられ、仏事の料理を中心に使われてきました。石川や沖縄のように、卵と組み合わせてボリュームのあるおかずに仕上げる食べ方もあります。
はじめに
日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。
この本では、肉や卵など魚介類以外の動物性たんぱく質の食品と、豆腐や麩などの植物性たんぱく質の食品を使った料理91品を取り上げました。昭和35年にほぼ2:1だった魚介類と肉・卵類の摂取比率が、45年には1:1と、急速に肉・卵の消費が増えましたが、庶民の感覚としてはまだまだ貴重品だった時代の料理です。
自宅でさばいた鶏はみんなで囲む鍋になり、豚や牛、羊や馬やくじらは地域ごとの産業や伝統と関連しながら皮や内臓も余すことなく食べられてきました。いのししや蜂の子、イナゴなど、とって食べる獣や虫の料理は、他の生命をいただいて生きる営みを改めて思い出させてくれるようです。
ゆでてかたくしめた豆腐を主役にした煮物は、ボリュームたっぷりの主菜、ごちそうです。加工品である凍り豆腐や副産物であるおからも含めて、食卓での豆腐の存在感は今よりもずっと大きいものでした。
聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。
2018年2月
一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会
目次
凡例
- 〈鶏の料理〉
- 名古屋コーチンのひきずり(愛知県)………6
- 鶏肉とねぎの煮こみ(群馬県)………8
- ひこずり(岐阜県)………9
- かしわのすき焼き(大阪府)………10
- かしわのすき焼き(奈良県)………11
- 水炊き(福岡県)………12
- ひきとおし(長崎県)………14
- いりやき(長崎県)………16
- 治部煮(石川県)………17
- 鶏ちゃん(岐阜県)………18
- がめ煮(福岡県)………19
- とり天(大分県)………20
- 鶏のうま煮(宮崎県)………21
- とり刺し(鹿児島県)………22
- 【コラム】鶏をさばく………23
- 〈豚と牛の料理〉
- もつ煮(群馬県)………25
- 餃子(神奈川県)………26
- 焼売(神奈川県)………27
- どて焼き(大阪府)………28
- ぐっだき(兵庫県)………29
- 松茸入りすき焼き(広島県)………30
- 葉にんにくのすき焼き(高知県)………31
- 豚の角煮(長崎県)………32
- 浦上そぼろ(長崎県)………33
- とんこつ(鹿児島県)………34
- ラフテー(沖縄県)………36
- スーチカー(沖縄県)………37
- アシティビチ(沖縄県)………38
- ミミガーサシミ(沖縄県)………40
- 〈羊と馬といのししの料理〉
- ジンギスカン鍋(北海道)………42
- 馬肉鍋(青森県)………44
- 馬かやき(秋田県)………45
- もつ煮(山形県)………46
- しし鍋(岡山県)………47
- ぼたん鍋(島根県)………48
- しし鍋(徳島県)………49
- しし鍋(高知県)………50
- 〈くじらの料理〉
- くじらかやき(秋田県)………52
- くじらの甘煮(千葉県)………53
- 関東煮(大阪府)………54
- ハリハリ鍋(大阪府)………56
- はりはり鍋(兵庫県)………57
- くじらの竜田揚げ(和歌山県)………58
- くじらの竜田揚げ(山口県)………59
- おばいけのぬた(山口県)………60
- くじら肉と野菜の炒め物(福岡県)………61
- くじらなます(長崎県)………62
- カマのごぼう煮(茨城県)………63
- 【コラム】くじらはまるごと食べられる………64
- 〈卵と牛乳の料理〉
- 貝焼き味噌(青森県)………67
- 卵焼き(東京都)………68
- だし巻き卵(大阪府)………69
- 茶碗蒸し(宮城県)………70
- 小田巻蒸し(大阪府)………71
- こが焼き(鹿児島県)………72
- ちっこ豆腐(千葉県)………74
- 牛乳豆腐(神奈川県)………75
- 【コラム】虫をとる・食べる楽しみ………76
- へぼの佃煮(愛知県)………77
- イナゴの佃煮(宮城県)………78
- 蜂の子のなす炒め(宮崎県)………79
- 〈豆腐とおからの料理〉
- つと豆腐(福島県)………81
- つと豆腐(茨城県)………82
- こも豆腐の煮物(岐阜県)………84
- しめ豆腐(和歌山県)………85
- こも豆腐(鳥取県)………86
- 鉱泉豆腐(群馬県)………88
- 豆腐のおかか煮(東京都)………89
- 寄せ豆腐(新潟県)………90
- こくしょ(石川県)………91
- 豆腐田楽(愛知県)………92
- つしま(山口県)………93
- 菜豆腐(宮崎県)………94
- ひろうすの炊いたん(京都府)………96
- おひら(徳島県)………97
- うじら豆腐(沖縄県)………98
- 凍み豆腐の煮物(福島県)………99
- 高野豆腐粉と野菜の煮物(兵庫県)………100
- こつっ豆腐の煮物(鹿児島県)………101
- 呉豆腐(佐賀県)………102
- おからの炊いたん(京都府)………103
- きらずのおよごし(佐賀県)………104
- からなます(千葉県)………105
- おまんずし(島根県)………106
- あずま(広島県)………107
- 唐ずし(山口県)………108
- 丸ずし(愛媛県)………109
- ほおかぶり(高知県)………110
- おかめずし(長崎県)………111
- 〈麩の料理〉
- すだれ麩のごま酢和え(茨城県)………113
- 車麩の卵とじ(石川県)………114
- 麩の辛子和え(福井県)………115
- 丁字麩の辛子和え(滋賀県)………116
- フーイリチー(沖縄県)………117
-
- 「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内………118
- 調理科学の目1 豆腐や肉はどう食べられているか………122
- 調理科学の目2 牛肉の好みに地域差・年代差はあるのか………124
- 都道府県別 掲載レシピ一覧………125
- 素材別索引………126
- その他の協力者一覧………127
- 著作委員一覧………128
- 出版にあたって………129