伝え継ぐ日本の家庭料理
年取りと正月の料理
著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
発行:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ
◆全巻定価:49,280円(税込)全巻を購入する(田舎の本屋さん)
こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。
定価:1,760円(税込)
(内容は同じです)
雑煮・もち
丸もちに角もち、醤油味に味噌味と、全国で多彩な雑煮がつくられています。もちが主役のシンプルなものから、山海の幸を盛ったものまで、お国柄が反映され、ここで紹介するのも、ほんの一部です。雑煮以外の正月のもち料理も紹介します。
いずし・なれずし
正月にはもちばかりでなく、すしを食べる習慣も各地で見られます(既刊「すし」参照)。米と魚を贅沢に使ったすしは新年にもふさわしいごちそうです。ここでは酢めしを使うすしではなく、正月に向けて仕込み発酵・熟成させる、いずしとなれずしを紹介します。
昆布巻き・煮豆
真っ黒な昆布をくるくると巻いた形を、人はなぜめでたいと思うのでしょうか。巻く魚はいろいろ、昆布ではなくあらめで巻くものもあります。煮豆も黒豆に限りません。金時豆や落花生を煮て、細かく切りそろえて煮た野菜と合わせたりもします。
なます・漬物
ごちそうがそろう正月料理に、さっぱりとして保存もきく、なますや酢漬けは欠かせません。にんじんの赤と大根の白の組み合わせが基本ですが、魚や落花生、柿で旨みやコク、甘味を加えます。真っ赤に染まったかぶや、にんじんだけの酢漬けも色鮮やかです。
煮物・煮しめ
いもや根菜、山菜やちくわにかまぼこ、魚などをたっぷり使った煮物には、子孫繁栄や長寿と健康の願いをこめためでたい食材が並びます。三が日は料理をしなくてもよいようにたっぷりつくり、煮返して食べながら正月をゆっくりと過ごしました。
魚・汁・寄せ物など
年取り魚のなめたがれいの煮つけ、「みそのつきおさめ」で大晦日に食べる豆腐焼き、雑煮とは別にたっぷりつくるけんちん汁、甘い茶碗蒸しに水ようかんと、正月には各地で個性的な料理がつくられています。それぞれいわれのある料理が並んだ正月の膳も登場します。
(写真撮影 高木あつ子、長野陽一、五十嵐公)
はじめに
日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。
本書では、新しい年を迎える節目に準備される料理を集めました。かつては日没を一日の変わり目とする考え方があり、大晦日の夕食に年取りのごちそうを用意する地域もあります。新潟では大晦日には早めに入浴をすませて新しい服に着替え、玄関の鍵をかけ、家族だけで年取り料理を厳かに味わい、大分では年取りには家族や親戚一同が集まり、刺身や焼き物、煮物、鍋などの料理をたっぷり用意して食事をしました。
元日の朝を迎えると、地域ごと家ごとにさまざまな雑煮を祝い(食べ)ました。具の少ないシンプルな雑煮では、もちが神聖なものに見えてきます。具だくさんな雑煮からは山海の幸をそろえた喜びが伝わってきます。なれずしやあらめ巻き、落花生の煮豆など、正月料理もところ変わればじつに多彩です。一つひとつの食材に健康長寿や豊年満作のいわれがある伝統的な正月料理には、この一年も誰もが無事で過ごせるようにと願う気持ちを、時代を越え場所を越えて伝える力があるようです。
聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。
2020年11月
一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会
目次
凡例……4
〈雑煮・もち〉
くるみ雑煮(岩手県)……6
雑煮(宮城県)……8
油揚げと凍み豆腐の雑煮(宮城県)……10
塩引きもち(茨城県)……11
はば雑煮(千葉県)……12
雑煮(神奈川県)……13
雑煮(東京都)……14
雑煮(呉東・呉西)(富山県)……16
雑煮(福井県)……18
ぶり雑煮(長野県)……19
丸大根の雑煮(三重県)……20
白味噌雑煮(京都府)……21
雑煮(北部)(京都府)……22
雑煮(大阪府)……24
はまぐり雑煮(兵庫県)……26
雑煮(和歌山県)……27
雑煮(奈良県)……28
雑煮(島根県)……30
小豆雑煮(鳥取県)……32
ぶり雑煮(岡山県)……33
ぶりと大根の雑煮(広島県)……34
かぶ入り雑煮(山口県)……35
雑煮(徳島県)……36
あんもち雑煮(香川県)……38
潮江菜入りの雑煮(高知県)……39
博多雑煮(福岡県)……40
有田雑煮(佐賀県)……42
具雑煮(長崎県)……43
雑煮(熊本県)……44
いもんこんすい(宮崎県)……45
焼きえびの雑煮(鹿児島県)……46
【コラム】
丸もちか角もちか? 境界線付近の雑煮いろいろ……47
雑煮文化圏マップ……48
〈いずし・なれずし〉
鮭のいずし(北海道)……50
かぶらずし(石川県)……52
鮎なれずし(岐阜県)……54
ふなずし(滋賀県)……56
〈昆布巻き・煮豆〉
にしんの昆布巻き(北海道)……59
わかさぎの昆布巻き(茨城県)……60
昆布巻き(群馬県)……61
はえのあらめ巻き(愛知県)……62
はぜのあらめ巻き(三重県)……64
昆布巻き(岡山県)……65
じゃり豆(和歌山県)……66
じゃじゃ豆(和歌山県)……67
れんぶ(徳島県)……68
黒豆の煮豆(兵庫県)……70
〈なます・漬物〉
ゆず巻き(埼玉県)……72
ぶりなます(石川県)……73
落花生なます(静岡県)……74
古老柿なます(京都府)……75
柿なます(奈良県)……76
酢にんじん(宮崎県)……77
緋のかぶら漬け(愛媛県)……78
【コラム】
年取りと正月の魚いろいろ……80
〈煮物・煮しめ〉
煮しめ(岩手県)……82
ひょう干しの煮物(山形県)……84
おひら(福島県)……85
八つ頭の煮物(栃木県)……86
のっぺい(新潟県)……87
正月煮もん(新潟県)……88
えびいもと棒だらの炊いたん(京都府)……90
煮しめ(兵庫県)……91
春羹(鹿児島県)……92
〈魚・汁・寄せ物など〉
あんこうのとも和え(秋田県)……95
紅葉漬け(岩手県)……96
なめたがれいの煮つけ(宮城県)……98
紅さしの南蛮漬け(長崎県)……99
豆腐焼き(和歌山県)……100
辛子れんこん(熊本県)……101
くじゃく(大分県)……102
茶碗蒸し(青森県)……103
矢羽のようかん(茨城県)……104
水ようかん(栃木県)……105
つぼ(北海道)……106
けんちん汁(山梨県)……107
中身汁(沖縄県)……108
年越しの料理(岐阜県)……110
正月の膳(兵庫県)……112
正月料理(宮崎県)……114
「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内……116
調理科学の目1 伝統的な正月料理 その多様性と実態 …120
調理科学の目2 歳神様を迎える正月行事と料理…122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧/著作委員一覧……126
出版にあたって……128