汁もの | 伝え継ぐ日本の家庭料理
伝え継ぐ日本の家庭料理

汁もの

著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
発行:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ

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こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。

定価:1,760円(税込)
(内容は同じです)

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魚と海藻の汁

おつい(愛媛県)

魚に貝、かになどのうま味を余さず食べられる汁はごちそうです。土地ごとにさまざまな旬の魚介で汁をつくってきました。内臓ごと豪快に煮こんだ汁、たたいてだんごにした汁、かつお節でつくる即席みそ汁や、磯の香りが満喫できる海藻の汁も紹介します。

野菜といもの汁

旬の野菜の味噌汁(埼玉県)

根菜やきのこや里芋がたっぷり入った冬の汁は体を芯から温めます。あさつきやたけのこの汁では春の訪れを喜び、夏はさっぱりとしたきゅうりやなすの汁にごまを加えてコクをつけます。ご飯がたくさん食べられるとろろ汁は、秋の収穫を祝う滋養たっぷりの汁です。

大豆と肉の汁

めった汁(石川県)

大豆の汁は食べごたえがあります。すりつぶして呉汁にしたり、豆腐や打ち豆、納豆でも汁をつくりました。くじらや牛、豚、鶏、山羊などの肉は、少し使っても風味とうま味が増し、たっぷり使えば大勢で食べるごちそうになりました。

だんごの汁

けいらん(青森県)

丸いだんごは祝いの形。甘いあんが入っただんごの汁「けいらん」は北東北のハレの1品です。だんごとずいきの汁は産婦の快復と乳の出によいといわれ、近所にも祝いで配られました。米や小麦、とうもろこしやいもでつくるだんごを汁の実にすることもありました。

(写真提供 五十嵐公、長野陽一)

 

はじめに

 日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。

 本書では、全国の汁ものを集めました。「一汁一菜」「一汁三菜」などの言葉があるように、おかずの数は変わっても、ご飯と汁もののセットは日本の食事の基本になっています。土地ごと、季節ごとの材料を使い、汁ものはいつも食卓にありました(*)。
 魚の汁は、身はもちろんアラや内臓も豪快に煮こんで深い旨みを味わいます。かにをすりつぶしたり、いかの墨を加えた汁もあります。小さめの魚や小骨の多い魚は、たたいてすり身にするひと手間で、老若男女がおいしく食べられる汁になります。
 あさつきやあおさの汁は春を告げる香りです。夏にはきゅうりやなすにごまを加えた汁で元気になり、秋冬はれんこんや里芋などでとろみのついた汁が体を芯から温めます。酒粕を加えた粕汁や、大豆をすりつぶした呉汁は汁自体が濃厚な滋養食です。くじらや鶏、豚や山羊もごちそうの汁になりました。ハレの日のだんごの汁もあれば、いもや雑穀のだんごで汁の実を増やした日常の汁もあり、家々の数だけ「わが家の汁」がつくられています。

 聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。

2019年11月

一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会

 

 (*) 汁けの多い料理のうち、すいとんなどのようにだんごや麺の割合が多く、一品で主食を兼ねるものは「そば・うどん・粉もの」で照会します。


目次

凡例……4

〈魚と海藻の汁〉
すしにしんの三平汁(北海道)……6
かじかの味噌汁(北海道)……8
鮭の粕汁(北海道)……10
さんまのすり身汁(岩手県)……11
じゃっぱ汁(青森県)……12
どんこ汁(宮城県)……14
寒だら汁(山形県)……15
あんこうのどぶ汁(茨城県)……16
いわしのだんご汁(千葉県)……18
たたき汁(東京都)……19
たら汁(富山県)……20
めぎすのだんご汁(石川県)……21
粕汁(大阪府)……22
どぎ汁(兵庫県)……23
めいぼの味噌汁(山口県)……24
えそのだんご汁(山口県)……25
おつい(愛媛県)……26
わらすぼの味噌汁(福岡県)……27
茶節(鹿児島県)……28
カチューユー(沖縄県)……29
よどのすまし汁(茨城県)……30
鯉こく(岐阜県)……31
どじょう汁(香川県)……32
どじょう汁(大分県)……34
あさりの味噌汁(千葉県)……35
しじみ汁(茨城県)……36
【コラム】汁の素材になる河川や田んぼの生き物……37
にいなのすまし汁(島根県)……38
のっぺ汁(島根県)……39
かに汁(鳥取県)……40
つがに汁(高知県)……42
山太郎がにの味噌汁(鹿児島県)……44
かに汁(愛知県)……46
いちご煮(青森県)……47
いか墨汁(沖縄県)……48
あおさの味噌汁(三重県)……49
あおさの味噌汁(長崎県)……50

〈野菜といもの汁〉
けの汁(青森県)……52
せんべい汁(青森県)……53
ひろっこ汁(岩手県)……54
遠山かぶの味噌汁(山形県)……55
たけのこ汁(福島県)……56
かんぴょうの卵とじ(栃木県)……57
旬の野菜の味噌汁(埼玉県)……58
干葉の粕汁(東京都)……59
いもがらのおつゆ(東京都)……60
とうがんの豚汁(神奈川県)……61
れんこんのおつゆ(石川県)……62
たけのこ汁(長野県)……63
きゅうりの冷や汁(三重県)……64
泥亀汁(滋賀県)……65
粕汁(京都府)……66
そうめんの味噌汁(奈良県)……67
粕汁(香川県)……68
ゆきのつゆ(佐賀県)……69
いも煮(牛肉)(山形県)……70
いも煮(豚肉)(山形県)……71
自然薯のとろろ汁(静岡県)……72
つぐねいものとろろ汁(岡山県)……74
のっぺい(広島県)……75
いもたき(愛媛県)……76
おとし汁(大分県)……77
ムジの汁(沖縄県)……78

〈大豆と肉の汁〉
呉汁(福井県)……80
呉汁(岡山県)……82
すったて(岐阜県)……84
呉汁(鳥取県)……85
呉汁(佐賀県)……86
呉汁(熊本県)……87
落花生の呉汁(宮崎県)……88
けんちん汁(神奈川県)……89
八杯汁(愛知県)……90
おおじる(広島県)……91
ゆし豆腐(沖縄県)……92
打ち豆汁(滋賀県)……93
納豆汁(秋田県)……94
納豆汁(山形県)……95
くじら汁(北海道)……96
くじら汁(新潟県)……97
めった汁(石川県)……98
おつけ(和歌山県)……99
さつま汁(鹿児島県)……100
イナムドゥチ(沖縄県)……101
ヒージャー汁(沖縄県)……102

〈だんごの汁〉
けいらん(青森県)……104
けいらん(岩手県)……106
けいらん(秋田県)……107
まめぶ(岩手県)……108
三日のだんご汁(富山県)……109
ちょぼ汁(兵庫県)……110
もろこしのおつけだんご(山梨県)……112
じゃがだご汁(長崎県)……113
いもんせんのだんご汁(鹿児島県)……114
【コラム】味噌の種類と分布……115

「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内……116
調理科学の目1 懐かしい汁ものを高齢化時代に楽しむ …120
調理科学の目2 アクと加熱法と汁のおいしさ …122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧/著作委員一覧……126
出版にあたって……128