野菜のおかず 秋から冬 | 伝え継ぐ日本の家庭料理
伝え継ぐ日本の家庭料理

野菜のおかず 秋から冬

著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ

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こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。

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大根・干し大根

切り干し大根の煮物(香川県)

大根は野菜の中でもっとも作付面積が広く身近な野菜で、それだけにさまざまな食べ方があります。大きく切って煮たり、せん切りをなますにしたり、各地の組み合わせ、味つけ次第で主役にも脇役にもなります。干し大根もそれぞれ特徴を生かして使われています。

にんじん・ごぼう・れんこん

にんじんシリシリー(沖縄県)

根菜は、秋が深まると根や茎にでんぷんをたくわえて、おいしくなります。ここでは大根以外で根菜がメインの料理を集めました。彩りになるにんじん、縁起もののごぼうやれんこん、しょうがやくわいも登場します。

葉物・ねぎ

まんばのけんちゃん(香川県)

葉物はほうれん草や小松菜などが一般的ですが、じつは地域ごとに大事に育てられてきた品種があり、今も食べられています。それらを使った各地のおひたしや和え物などが出てきます。そのほか、長ねぎがメインになるレシピもとりあげました。

秋冬野菜いろいろ

ぐる煮(高知県) のっぺい

秋から冬にかけておいしくなる野菜をいろいろと盛りこんだ煮物を集めました。これらは冠婚葬祭や行事に欠かせないものだったり、日常的にたくさんつくって煮返して何日も食べるものだったりします。材料の切り方や盛りつけにも地域ごとの特徴がみられます。

かんぴょう・ずいき・かぼちゃ

すこ(福井県) 生の赤ずいきの甘酢漬け

夏にとれるかぼちゃ、ゆうがおからつくるかんぴょうは季節を越えて、秋から冬にも利用されます。ふだんは脇役のかんぴょうも産地ではメインの食材になります。里芋の茎であるずいきは、生のものも干したものも使い、酢の物や煮物で食感を楽しみます。

菊・きのこ・種実

もってのほかのくるみ和え(山形県)

色鮮やかでほろ苦い食用菊に、香りや食感を楽しむきのこ。ていねいにすってコクを出すくるみやごまの料理、どんぐりを挽いたり粉にしてつくる料理は手間ひまかけたごちそうです。とんぶり、あけび、なつめも地域限定の秋の味です。

漬物を使って

あほ炊き(三重県)

酸っぱくなった古漬けのたくあんや白菜漬けを使った料理は複雑な旨みがあり、これが食べたくて漬物を漬けるという人もいるほどです。塩抜きする前提で漬ける新潟の体たい菜なや、高知のある集落だけに伝わる漬物の鍋料理も紹介します。

(写真撮影 五十嵐公、奥山淳志、高木あつ子、戸倉江里、長野陽一)

 

 

 

はじめに

日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。

本書では、秋から冬によく食べられてきた野菜類のおかずを集めました。山菜や果菜が主役の春夏を過ぎ、根菜や葉物、木の実などが旬を迎える時季です。なかでも、大根が主役のおかずがもっとも多く、冒頭から28品続きます。塩もみに煮物、炒り煮になますと、見ていて飽きません。この時季の大根は寒さに耐えるために糖度を上げてよく太るので甘くみずみずしく、どんな食べ方にもなじむようです。甘さや旨みが増して独特の風味の干し大根も、冬の乾燥と寒さがあってこそのおいしさです。日本の大根はヨーロッパやアメリカ大陸まで分布している仲間の中でもひときわ大きく、『古事記』『日本書紀』の昔から「おおね」と呼ばれて親しまれてきました。そんな歴史を感じさせる多彩な食べ方です。
大根同様に地中で栄養を蓄えるごぼうやれんこん、寒さで甘く肉厚になる葉物、次世代のために油やでんぷんが詰まった木の実などを利用して、実りに感謝し冬を越していく料理がつくられてきました。

聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。

2018年11月

一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会

 


目次

〈大根・干し大根〉

ふろふき大根としこなます(神奈川県)……6
煮あえっこ(青森県)……8
えび大根(栃木県)……9
粕煮(栃木県)……10
大根びき(長野県)……11
煮じゃあ(広島県)……12
味噌おでん(愛知県)……13
おでん(しょうが醤油)(兵庫県)……14
桜島大根と地鶏の煮しめ(鹿児島県)……16
こしょう大根(熊本県)……18
ゆず巻き(東京都)……19
お酢わい(富山県)……20
かぶらごき(富山県)……21
なます(福井県)……22
紅白なます(京都府)……23
煮なます(和歌山県)……24
ならえ(徳島県)……25
もみ大根(愛媛県)……26
かけあえ(佐賀県)……27
凍み大根の煮しめ(宮城県)……28
金時豆とたこの足の煮物(京都府)……29
干し大根の煮しめ(島根県)……30
かんぴょうの煮しめ(山口県)……31
切り干し大根の煮物(香川県)……32
野菜の煮しめ(長崎県)……33
煮しめ(宮崎県)……34
あいまぜ(大分県)……35

〈にんじん・ごぼう・れんこん〉

にんじんの子和え(青森県)……37
にんじんシリシリー(沖縄県)……38
きんぴら(群馬県)……39
ごんぼの油炒め(福井県)……40
ねごんぼ(滋賀県)……41
煮和え(茨城県)……42
はすと大根の白和え(埼玉県)……43
れんこんの炊き合わせ(石川県)……44
はすの三杯酢(山口県)……45
しょうがの佃煮としょうがの天ぷら(山梨県)……46
くわいのから揚げ(広島県)……48

〈葉物・ねぎ〉

ひやしる(山形県)……50
ほうれん草のごまよごし(埼玉県)……52
よごし(富山県)……53
下北春まなのおひたし(奈良県)……54
がせつ(広島県)……55
ちしゃなます(山口県)……56
まんばのけんちゃん(香川県)……57
ンジャナスーネー(沖縄県)……58
白菜と豚肉と油揚げの炊いたん(奈良県)……59
白菜の白和え(山口県)……60
【コラム】本書で登場する地方の葉物……61
ねぎフライ(千葉県)……62
ねぎぬた(埼玉県)……63
朴葉味噌(岐阜県)……64

〈秋冬野菜いろいろ〉

おひら(静岡県)……67
こづゆ(福島県)……68
のっぺい汁(三重県)……70
煮味噌(愛知県)……72
こ煮物(鳥取県)……73
けんちょう(山口県)……74

〈かんぴょう・ずいき・かぼちゃ〉

かんぴょうのごま酢和え(栃木県)……76
かんぴょうと里芋の煮物(滋賀県)……78
ずいきの酢の物(栃木県)……79
いもがらの酢醤油和え(埼玉県)……80
すこ(福井県)……81
芋茎の煮物(岐阜県)……82
だつの煮物(愛知県)……83
おしくじり(山梨県)……84
かみなり(長野県)……85
かぼちゃ干しのえごま和え(長野県)……86
【コラム】本書で登場する干し野菜などの乾物……87

〈菊・きのこ・種実〉

もってのほかのくるみ和え(山形県)……89
かきのもとの甘酢和え(新潟県)……90
香茸の煮しめ(島根県)……91
さもだしの塩辛(青森県)……92
かんぴょうのくるみ和え(岩手県)……94
白和え(宮城県)……95
ぜんまいのくるみ和え(滋賀県)……96
会津みしらず柿のくるみ和え(福島県)……98
くるみ豆腐(新潟県)……99
ごま豆腐のあんかけ(山形県)……100
かしきり(高知県)……102
かたぎの実のいぎす(大分県)……104
とんぶりの山かけ(秋田県)……105
あけびの味噌詰め焼き(山形県)……106
なつめの甘露煮(岐阜県)……107

〈漬物を使って〉

あざら(宮城県)……109
煮菜(新潟県)……110
たくあんの煮たの(福井県)……111
あほ炊き(三重県)……112
古漬け大根の炊いたもの(香川県)……113
ほうり漬け(高知県)……114
たくあんのいりこ煮(福岡県)……115

「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内……116
調理科学の目1 根菜の味と食べ方をめぐって……120
調理科学の目2 野菜の調理は「硬化」をうまく利用する……122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧……126
著作委員一覧……127
出版にあたって……128