魚のおかず いわし・さばなど | 伝え継ぐ日本の家庭料理
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魚のおかず いわし・さばなど

著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
発行:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ

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こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。

定価:1,760円(税込)
(内容は同じです)

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いわし

かつては庶民的な魚の代名詞のように身近だったいわし。“ご飯の代わりに食べた”という話があるほどです。新鮮ならまず刺身で食べますが、食べ切れなければ酢や塩をしたり、米ぬかに漬けて保存したりと、たくさん手に入るからこその工夫が見られます。

いわしの塩煎り(石川県)

 

あじ・さば

今も全国的に親しまれているあじやさば。一尾丸ごとを家庭でおろすのが当たり前でした。尾頭つきのあじの煮物、背開きのさばを漬けたへしこ、そぎ切りのさばのすき焼き風鍋など、日常のおかずにもなれば、ハレの日のごちそうにもなります。

さばのぬた(福井県)

 

ぶり・かつおなど

ぶり、かつおのほか、さわらやかじきと比較的大きな魚を取り上げます。おろしたたっぷりの身は刺身や煮魚、酢じめなどさまざまに調理して食べますが、あら、頭、心臓や卵巣など内臓だけでも一品になり、大きな魚を丸ごと食べつくします。

生節(和歌山県)

 

さんま・とびうお・にしんなど

このしろ、ままかり、えつも含めた小型から中型の魚のおかずです。ここでは、さんまは北〜東日本、とびうおは西〜南日本でつくられてきた料理が並びます。一方で身欠きにしんのように乾物として北前船で運ばれ、各地で利用されている魚もあります。

さんまのぽうぽう焼き(福島県)

 

小魚・いろいろな魚

瀬戸内のいかなご、鹿児島のきびなごなどの小魚から、どっさり手に入る新鮮な魚を、魚種にこだわらず使う鍋や塩辛、揚げ物などの料理です。なかでも、はんぺん、てんぷら、かまぼこなどすり身でつくる料理は、地域や季節によっていろいろな魚が使われます。

一匹なりの塩辛(三重県)

 

いか・たこ

世界の中で日本人が一番食べているという、いかとたこ。生での利用は海に近い地域ですが、干したり、塩や酢で漬けたりした加工品を使った料理は内陸部も含めて全国にあります。うま味が強いので、野菜やいもと組み合わせた煮物も多いです。

いかめんち(青森県)

 

えび・かに

ここで紹介するのは、輸入品や冷凍品ではなく、地元の海でとれた新鮮なえびやかにを使った料理です。かつては小えびは普段のおかずに、かにもおやつにするほど、たくさんとれていました。独特のおいしさをいかし、煮物や揚げ物などさまざまに使います。

桜えびのかき揚げ(静岡県)

 

(写真撮影 五十嵐公、奥山淳志、高木あつ子、戸倉江里、長野陽一)

 

 
 
 

はじめに

日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。

このシリーズでは、魚介類のおかずは2冊に分けて紹介します。本書では、比較的広い範囲で食べられてきた魚介類の料理を集めました(*)。いわしやさばなど大衆魚と呼ばれた魚や、ぶりやかつお、さんま、とびうおなど日本近海を回遊し各地でとれる魚です。また、多様な小魚や小えびを食べる料理、魚種を限定せずにそのときとれる魚でつくる鍋や揚げ物、すり身加工品といった食べ方も全国でみられます。そしていかとたこは、世界でも日本人がいちばん食べるといわれるほど親しまれてきました。

広島の小いわしの刺身は、何度も冷水で洗うことで身が引き締まり臭みがとれます。福井のさばのへしこは、10カ月以上もぬかに漬けて濃厚なかつお節のようなうま味と香りを生み出します。山形の夏いかのくるみ和えは、出始めの小さないかだからこそおいしい、ワタも墨も丸ごと煮る料理です。おなじみの魚にこんな食べ方があったのか、と思うかもしれません。魚離れがいわれる昨今ですが、つくってみたいと思う料理がきっとあるでしょう。

聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。

2018年8月

一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会

*:もう1冊は「魚のおかず 地魚・貝・川魚など」(仮)として、比較的地域性の強い魚介類の料理をまとめます。また、魚介類を使った料理はご飯物や麺、汁物、佃煮や行事食などのテーマでもたくさん登場します。
 


目次

〈いわし〉

ごま漬け(千葉県)……6
いわしの卯の花漬け(千葉県)……8
いわしの塩煎り(石川県)……9
かぶし(石川県)……10
べか鍋(石川県)……12
いわしだんご(鳥取県)……13
いわしのへしこ(岡山県)……14
小いわしの刺身(広島県)……16
いわしのぬかみそ炊き(福岡県)……17
いわしのかけ和え(佐賀県)……18
すのしゅい(宮崎県)……19

〈あじ・さば〉

あじの煮つけ(千葉県)……21
たたき揚げ(東京都)……22
なれずし(石川県)……23
あじの三杯酢(香川県)……24
きらすまめし(大分県)……25
さばの味噌煮(神奈川県)……26
さばのぬた(福井県)……27
へしこ(福井県)……28
さばの煮ぐい(島根県)……30
さばのじゃう(兵庫県)……32
さばのごま醤油(福岡県)……33
浜焼きさば(福井県)……34

〈ぶり・かつおなど〉

ぶり大根(富山県)……36
ぶりの照り焼き(大阪府)……38
魚のぬた(ぶり)(高知県)……39
なまりと野菜の煮つけ(群馬県)……40
しか煮(神奈川県)……41
へその味噌煮(静岡県)……42
生節と淡竹、ふきの炊いたん(京都府)……43
生節(和歌山県)……44
かつおの沖なます(徳島県)……45
かつおのたたき(高知県)……46
新子の刺身(高知県)……48
かつおのびんた料理(鹿児島県)……49
昆布じめ(富山県)……50
さわらの煮つけ(岡山県)……51
さわらの真子の炊いたん(岡山県)……52
【コラム】本書で登場する魚介の加工品 1 ……53

〈さんま・とびうお・にしんなど〉

さんまの甘露煮(北海道)……55
さんまのぽうぽう焼き(福島県)……56
ぱいた焼き(茨城県)……57
ごさい漬け(茨城県)……58
とびうおの刺身(島根県)……60
とびうおの刺身(鹿児島県)……62
かどのすし漬け(岩手県)……63
にしんの山椒漬け(福島県)……64
にしんの山椒漬け(新潟県)……65
身欠きにしんの甘辛煮(埼玉県)……66
にしんなす(京都府)……67
にしんとじゃがいもの煮物(奈良県)……68
このしろの甘露煮(神奈川県)……69
焼きままかりの酢醤油漬け(岡山県)……70
えつの南蛮漬け(福岡県)……71

〈小魚・いろいろな魚〉

おでん(静岡県)……73
一匹なりの塩辛(三重県)……74
じふ(三重県)……75
いかなごの天ぷら(香川県)……76
魚の三杯酢(愛媛県)……77
ほおかぶり(山口県)……78
りゅうきゅう(大分県)……79
飫肥のてんぷら(宮崎県)……80
魚ん天ぷら(宮崎県)……81
かまぼことてんぷら(長崎県)……82
きびなごの刺身(鹿児島県)……84
【コラム】本書で登場する魚介の加工品 2 ……86

〈いか・たこ〉

いかめんち(青森県)……88
夏いかのくるみ和え(山形県)……89
いかの切りこみ(宮城県)……90
塩いかときゅうりの粕もみ(長野県)……91
いかと里芋の煮つけ(群馬県)……92
貝焼き(新潟県)……93
ほたるいかの酢味噌和え(富山県)……94
べいかの酢味噌かけ(岡山県)……96
するめの麹漬け(鳥取県)……97
【コラム】イカのさばき方……98
がりがりなます(茨城県)……99
たこのやわらか煮(兵庫県)……100
いもだこ(石川県)……102
いもたこ(香川県)……103

〈えび・かに〉

沖あがり(静岡県)……105
桜えびのかき揚げ(静岡県)……106
白えびのかき揚げ(富山県)……107
甘えびの煮つけ(石川県)……108
あみ大根(岡山県)……109
えび味噌(広島県)……110
えび味噌(香川県)……111
えびてん(愛媛県)……112
えびざっこ(福岡県)……113
かにの酢の物(石川県)……114
【コラム】カニのさばき方……115

「伝え継ぐ日本の家庭料理」読み方案内……116
調理科学の目1 魚をどう食べてきたか……120
調理科学の目2 イカの調理特性……122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧……126
著作委員一覧……127
出版にあたって……128