四季の行事食 | 伝え継ぐ日本の家庭料理
伝え継ぐ日本の家庭料理

四季の行事食

著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:1,760円(税込) 発行日:2021/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:B5変 128ページ

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新春・初午・旧正月

焼きまんじゅう(群馬県・初市)

三が日を過ぎても新春を祝う行事は続きます。七草のかゆや鏡開きのおしるこ、節分の豆でつくる香ばしい“福茶”。北関東では初午にすみつかれ、しもつかれなどと呼ぶ料理で一年の健康を願います。中国の旧正月(春節)の大根もちが定着した地域もあります。

春から夏

重箱料理(沖縄県・清明祭)

ひな祭りに花見、歌舞伎見物と心弾む行事が増え、外で食べる弁当も特別です。田植え後は、水に困らないようにと汁をよく吸う凍み大根の煮物を食べたりします。夏祭りにはそれぞれの名物料理があり、お盆は夏野菜の彩り鮮やかな料理でご先祖様を迎えます。

秋から冬

昆布巻き(福井県・秋祭り)

収穫祝いの秋祭りでは真っ赤なゆでがにや、さばずし、根菜たっぷりの煮物に舌鼓を打ちます。家々に幸をもたらす大黒様は納豆汁や黒豆ご飯の豆づくしでねぎらい、仏教行事「報恩講(ほうおんこう)」では豆腐や小豆がごちそうです。皆で一年の実りを喜ぶと、やがて年納めです。

冠婚葬祭

皿鉢料理(高知県)

季節を問わない行事でつくられる料理です。大鍋でつくる煮しめは人数の融通が利きます。大皿では山海の幸が地域の自然を表現します。春雨や干し椎茸、かまぼこなどいつでもある材料でできる椀物は、丁寧に盛りつけることでおもてなしの一品になります。

(写真撮影 高木あつ子、長野陽一)

はじめに

 日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。

本書では、年末年始以外で、各地のさまざまな行事でつくられる料理を集めました(*)。季節ごとに家族の無病息災を願う節分や夏祭り、子どもの成長を願う節句があります。農作業の進みに合わせ、田植えがすめば秋の豊作を祈り、刈り取りが終われば収穫に感謝する行事をします。暦とは別に、誕生や成人、結婚や長寿の祝い、あるいは年忌といったご先祖様も含めた人生の節目の行事もあります。これらの行事の度に人々は集まって祝ったり偲んだりするものでした。その場のために旬のものを使い、あるいは大事に保存しておいた山菜や乾物など、その年のできのよい食材を奮発してごちそうをつくります。共同で調理をしたり、家々の味を持ち寄ったりと、地域の味が伝承される機会にもなりました。昆布巻きをちょうどよい強さで縛る加減、照りよく煮上げるこつや、膳や大皿にもてなしの気持ちをこめる盛りつけ方などは、一緒につくって食べる経験の中で受け継がれてきました。

本書『四季の行事食』で「伝え継ぐ 日本の家庭料理」は全16冊完結となります。聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県で行ない、地元の方々にご協力いただき、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。この記録が、地域の味のたすきをつなぐきっかけに少しでもなれば、これほど嬉しいことはありません。これまでご協力くださった全国の多くの皆様と、完結までご愛読くださった読者の皆様に心よりお礼申し上げます。

2021年8月

一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会

 


目次

凡例……4

〈新春・初午・旧正月〉
だんごばら(山梨県・小正月)……6
松の内がゆ(東京都・七草)……8
七草の味噌おつゆ(佐賀県)……9
おしるこ(東京都・鏡開き)……10
焼きまんじゅう(群馬県・初市)……11
ゆずの味噌漬けと福茶(栃木県・節分)……12
すみつかれ(茨城県・初午)……13
つむじかり(福島県・初午)……14
しもつかれ(栃木県・初午)……16
すみつかれ(埼玉県・初午)……18
大根もち(兵庫県・旧正月)……19

〈春から夏〉
おいり(鳥取県・ひな祭り)……21
からすみ(岐阜県・ひな祭り)……22
遊山箱(徳島県・ひな祭り)……24
花見弁当(広島県)……26
重箱料理(沖縄県・清明祭)……28
わりご弁当(香川県・肥土山農村歌舞伎)……30
柏もち(和歌山県・端午の節句)……31
醤油寒天(山形県・酒田まつり)……32
やこめ(山梨県・田植え節句)……33
お田植えの煮物(長野県)……34
みょうがまんじゅう(熊本県・さなぼり)……36
すまんじゅう(埼玉県・甘酒祭り)……37
札幌まつりの料理(北海道)……38
たこ酢と半夏生だんご(大阪府)……40
かすべ(秋田県・港まつり)……42
棒たら煮(福島県・会津田島祇園祭)……43
鱧の湯引き(大阪府・天神祭り)……44
さざえご飯(福岡県・竜神祭)……45
おくずかけ(宮城県・お盆)……46
七色ぜい(千葉県・お盆)……47
盆汁(三重県)……48
七色お和え(奈良県・お盆)……49
たらわたの煮物(福岡県・お盆)……50
たらおさ(大分県・お盆)……51
盆料理(鹿児島県)……52
【コラム】屋外でとる食事いろいろ……54

〈秋から冬〉
昆布巻き(福井県・秋祭り)……56
貝のひも煮(山梨県・安産祭り)……58
おからこ(長野県・十五夜)……59
ゆでがに(大阪府・だんじり祭り)……60
さばずし(岡山県・秋祭り)……62
煮ごみ(佐賀県・おくんち)……63
だぎねん祭りの料理(宮崎県)……64
つぼん汁(熊本県・秋祭り)……66
ざく煮(群馬県・えびす講)……67
えびす講料理(神奈川県)……68
鮎のくされずし(栃木県・梵天祭り)……70
報恩講の料理(福井県)……72
里芋と小豆の煮物(福井県・報恩講)……74
ぜんまいの白和え(福井県・報恩講)……75
山菜の煮物(富山県・報恩講)……76
にざい(富山県・報恩講)……77
ほんこさま料理(岐阜県・報恩講)……78
お講大根(愛知県・報恩講)……80
ガタガタおろし(三重県・山の神)……81
大黒様のお歳夜のお膳(山形県)……82
納豆もち(滋賀県・スノウ講)……84
のっぺ(熊本県・もみすりのしまい祝い)……85
のっぺい(奈良県・春日大社おん祭り)……86

〈冠婚葬祭〉
干し魚入りの煮しめ(岩手県)……88
しめ豆腐(群馬県)……89
ひら(東京都)……90
鯛の唐蒸し(石川県)……92
菓子椀とつぎ汁(岐阜県)……94
佐渡煮しめ(新潟県)……96
あいまぜ(三重県)……97
豆ようかん(鳥取県)……98
さんとう(島根県)……99
もぶり(広島県)……100
おつぼ(広島県)……101
大平(山口県)……102
いとこ煮(山口県)……103
柏椀(山口県)……104
卵寒天(愛媛県)……105
ふかの湯ざらし(愛媛県)……106
ふくめん(愛媛県)……108
皿鉢料理(高知県)……110
長崎天ぷら(長崎県)……112
いぎりす(長崎県)……113
がめ煮(大分県)……114
【コラム】行事食と色……115

「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内 ……116
調理科学の目1 行事食から見直す日本文化……120
調理科学の目2 郷土料理の素晴らしさを科学する……122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧/著作委員一覧……126
出版にあたって……128
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*雑煮やおせち料理など年末年始の料理については『年取りと正月の料理』にまとめています。