伝え継ぐ日本の家庭料理
野菜のおかず 春から夏
著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:3,080円(税込)
発行:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:堅牢愛蔵版B5変形 130ページ
◆全巻定価:49,280円(税込)全巻を購入する(田舎の本屋さん)
こちらはソフトな表紙のハンディ版。価格もお求めやすくなっています。
定価:1,760円(税込)
(内容は同じです)
たけのこ・ふき
春から初夏にかけて次々と出てくるたけのこは、掘りたてのゆでたてが最高の贅沢。食べきれない分は塩漬けなどにし、成長しすぎたたけのこも穂先を干して一年中楽しみました。早春を告げるふきのとうや、その後の楽しみのふきやつわぶきの料理も紹介します。
山菜いろいろ
シャキシャキ、コリコリ、つるめき(とろとろ)……山菜は歯ざわりや色合いを楽しみ、ほろ苦さや独特な香りを味わいます。下ごしらえや保存に手がかかりますが、これを食べないと春がきた気がしないという味が各地で伝わっています。
わけぎ・葉もの
春になると、各地でわけぎやのびるを酢味噌や辛子酢味噌で食べます。同じ頃に旬を迎える貝類と和えるのが季節の味。春先には菜の花、高菜、わさびの葉や茎、明日葉、ちしゃ、夏にはしそ、金時草など地域で親しまれてきた葉物がおいしくなってきます。
なす・うり類・さや豆・豆
日本の夏を過ごすのに、水分をたっぷり含んで体を冷ましてくれる果菜類は欠かせません。なすやきゅうりはもちろん、ゆうがおや冬瓜、へちまやにがうりなどが活躍します。春を告げるえんどう豆やそら豆、夏が盛りのさやを食べる豆の料理も紹介します。
ずいき・りゅうきゅう
ずいきは、里芋やその仲間である赤芽芋の茎(葉柄)です。干したものは一年中使いますが、生は夏から秋にかけてが旬。酢の物にすると鮮やかな赤に染まります。はすいもの茎「りゅうきゅう」は酢で赤くはなりませんが、シャキシャキとした食感が夏にさわやかです。
はじめに
日本は四方を海に囲まれ、南北に長く、気候風土が地域によって大きく異なります。このため各地でとれる食材が異なり、その土地の歴史や生活の習慣などともかかわりあって、地域独特の食文化が形成されています。地域の味は、親から子、人から人へと伝えられていくものですが、食の外部化が進んだ現在ではその伝承が難しくなっています。このシリーズは、日本人の食生活がその地域ごとにはっきりした特色があったとされる、およそ昭和35年から45年までの間に各地域に定着していた家庭料理を、日本全国での聞き書き調査により掘り起こして紹介しています。
本書では、春から夏にかけて旬を迎える野菜や山菜を使ったおかずを集めました。
秋田では、残雪をかきわけて早春を告げるふきのとうを味噌と混ぜます。高知では磯の小石の間からギザギザとした葉をのぞかせる浜あざみを揚げます。他にもくさぎ、うこぎ、つわぶきなど、ほろ苦さとシャキシャキとした食感に春を感じます。たけのこもいろいろな種類が各地で食べられてきました。たくさんとれる山菜やたけのこを煮たり干したり塩漬けにしたりと、春は保存食づくりに大忙しの時期でもあります。
夏になると、なすやきゅうり、冬瓜、へちまやにがうりといった野菜が次々にとれます。山形の「だし」、長野の「やたら」のように生の野菜を刻むだけでさっぱりと食べる料理と、煮たり炒めたりしてかさを減らし、たっぷりと食べる料理が登場します。ずいきはシャキシャキとした歯ごたえと酢の味つけが凉やかです。酢味噌の「ぬた」や甘酢、辛子酢味噌、山椒やみょうがやしそなどを使ったさわやかな味つけの料理が各地で伝わってきました。
聞き書き調査は日本調理科学会の会員が47都道府県の各地域で行ない、地元の方々にご協力いただきながら、できるだけ家庭でつくりやすいレシピとしました。実際につくってみることで、読者の皆さん自身の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。
2021年2月
一般社団法人 日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会
目次
〈たけのこ・ふき〉
根曲がり竹の炒め煮(青森県)……6
山菜のかやき(秋田県)……8
へそ大根の煮物(福島県)……10
たけのこと身欠きにしんの煮物(福井県)…12
たけのこと煮干しの煮物(山梨県)……13
たけのこの木の芽和え(京都府)……14
淡竹とえんどうの煮物(高知県)……15
干したけのこの煮物(福岡県)……16
たけのこの味噌炊き(佐賀県)……17
たけのこのひこずり(熊本県)……18
たけのこん天ぷら(宮崎県)……19
ふきの煮つけ(静岡県)……20
ばっけ味噌(秋田県)……22
山ぶきのきゃらぶき(栃木県)……23
つわぶきと生節のきんぴら風(宮崎県)……24
【コラム】本書で登場するたけのこ……26
〈山菜いろいろ〉
みずの水もの(青森県)……28
行者にんにくの卵とじ(北海道)……30
うこぎのほろほろ(岩手県)……31
わらびたたき(山形県)……32
ぜんまいの一本煮(秋田県)……34
こごみのえごまよごし(群馬県)……35
山菜の天ぷら(群馬県)……36
旬の山菜と野菜の天ぷら(埼玉県)……37
つぼ煮(富山県)……38
水ふきの煮物(福井県)……39
沢あざみの煮物(岐阜県)……40
よもぎのおひたし(奈良県)……41
ごんぱちの炒め煮(和歌山県)……42
滝みずなの炒め物(岡山県)……43
山菜塩漬けの煮物(鳥取県)……44
くさぎとじゃがいもの炊き物(徳島県)……46
浜あざみの天ぷら(高知県)……47
いたどりの炒め煮(高知県)……48
くさぎ菜の油炒め(宮崎県)……50
【コラム】まだまだある山野草を使った料理……51
〈わけぎ・葉物〉
はたまの酢味噌和え(宮城県)……53
ねぎぬた(神奈川県)……54
しじみとわけぎのぬた(滋賀県)……55
たことわけぎのぬた(広島県)……56
わけぎ和え(香川県)……57
ぬた(愛媛県)……58
ひともじのぐるぐる(熊本県)……59
のびるのぐるぐる巻き(佐賀県)……60
しそ巻き(福島県)……62
菜の花のごま和え(千葉県)……64
明日葉の天ぷら(東京都)……65
わさびの天ぷら(東京都)……66
わさびの三杯酢漬け(東京都)……66
てんばおくもじ(石川県)……68
金時草の酢の物(石川県)……69
ちしゃもみ(広島県)……70
ちしゃもみ(香川県)……71
高菜とくじらの煮しめ(佐賀県)……72
菜焼き(熊本県)……73
若ごぼうと揚げの煮物(大阪府)……74
出西しょうがの甘辛煮(島根県)……75
【コラム】地方の夏野菜……76
〈なす・うり類・さや豆・豆〉
なすのしそ巻き(青森県)……78
野菜味噌(北海道)……80
なすのずんだ和え(宮城県)……81
だし(山形県)……82
なすの酢味噌和え(神奈川県)……83
ふかしなす(新潟県)……84
なすそうめん(石川県)……85
なすのオランダ煮(石川県)……86
やたら(長野県)……87
おなすの山椒和え(奈良県)……88
なすとそうめんの煮物(広島県)……89
オランダ(大分県)……90
伏見とうがらしとじゃこの炊いたん(京都府)……91
きゅうりとお揚げの炊いたん(京都府)……92
どっこきゅうりのあんかけ(富山県)……93
干しえびときゅうりの酢の物(山口県)……94
きゅうりと油揚げの酢の物(愛媛県)……95
はなはじき(長崎県)……96
かんぴょうの芯の煮物(岡山県)……98
冬瓜の酢の物(佐賀県)……99
ナーベーラーンブシー(沖縄県)……100
パパヤーイリチー(沖縄県)……102
ゴーヤーチャンプルー(沖縄県)……104
どろりあげ(熊本県)……105
十六ささげの味噌和え(岐阜県)……106
千石豆の煮物(愛知県)……107
そら豆の甘辛煮(東京都)……108
うすいえんどうの卵とじ(大阪府)……109
〈ずいき・りゅうきゅう〉
ずいきの甘酢漬け(埼玉県)……111
ずきがし(徳島県)……112
はすと太刀魚の酢の物(徳島県)……113
りゅうきゅうの酢の物(高知県)……114
「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内……116
調理科学の目1 五感で味わう春から夏の野菜・山菜…120
調理科学の目2 野菜の抗酸化性を生かす食べ方…122
都道府県別 掲載レシピ一覧……123
素材別索引……124
その他の協力者一覧/著作委員一覧……126
出版にあたって……128