伝え継ぐ日本の家庭料理3 すし ちらしずし・巻きずし・押しずし など

日本調理科学会 企画・編集

お彼岸のおはぎ、菜っ葉の漬物、正月の煮しめ…昔は当たり前につくられていた季節ごと、地域ごとの料理が伝わりにくくなり、“ふるさとの味”もいまや買って食べるものになりつつあります。

その味を家庭でつくれるレシピとして改めて伝えていくのが、このシリーズのねらいです。

海が近いか山が近いか。寒いか暖かいか。米がよくとれるか、主食が麦か雑穀か……。風土の多様性を反映し、個性的な食文化がはぐくまれ、それぞれの土地では、身の回りで手に入る限られた食材をいかに工夫しておいしく食べつなぐか、その知恵が磨かれてきました。

この企画では、そうした知恵とともに地域に伝わってきた料理、また戦後の貧しさも飽食の時代も経てこれから100年先もつくってもらいたい、食べてもらいたいと願う料理を、日本全国を調査して掘り起こし、再現できるレシピにしました。

レシピは単に材料とつくり方だけではなく、その土地ならではの工夫や思い出が詰まっています。実際につくることで、読者の皆さんの家庭の味になり、そこで新たな工夫や思い出が生まれれば幸いです。

巻構成

  1.  炊き込みご飯・おにぎり
  2.  どんぶり・雑炊・おこわ
  3.  すし ちらしずし・巻きずし・押しずしなど(2017年11月)
  4.  そば・うどん・粉もの
  5.  汁もの
  6.  魚のおかず イワシ・サバなど (2018年8月)
  7.  魚のおかず 地魚・貝・川魚など
  8.  肉・豆腐・麩のおかず (2018年2月)
  9.  野菜のおかず 春から夏
  10.  野菜のおかず 秋から冬 (2018年11月)
  11.  いも・豆・海藻のおかず
  12.  米のおやつともち
  13.  小麦・いも・豆のおやつ 2018年5月)
  14.  漬物・佃煮・なめ味噌
  15.  年取りと正月の料理
  16.  四季の行事食

企画・編集/(一社)日本調理科学会 発行/(一社)農山漁村文化協会 B5変型判、並製、オールカラー128ページ 各巻収録レシピ数・約80品 各本体1600円+税

2回配本 2月5日発売

2017年11月から、別冊うかたまとして刊行開始。以降、2021年8月まで毎年2、5、8、11月の年4回発行予定

特徴

●日本各地で掘り起こした、約1300品の料理がつくれます。

日本調理科学会に所属する研究者が現地の方から聞き書きをし、実際につくれるかどうか検証したうえで、レシピ化しています。料理の撮影はできるだけ現地で。つくれるレシピだから、次世代に伝えられるのです。

●なぜこの料理がこの地域で食べられていたか、その背景も解説します。

材料、つくり方だけではなく、料理のいわれ、料理がつくられている地域の特徴、聞き書きしたお年寄りたちの話なども掲載。各地域の気候風土もわかり、読み物としての面白さもあります。

●料理別、素材別、行事別の構成なので、全国を俯瞰して料理の比較ができます。

例えば同じばらずしでも、エビや白身魚など魚介が豊富か、干し椎茸や豆など乾物が中心か、具や味つけの違いなどもテーマ別構成なので1冊の中で比較できます。

2017年11月4日発売

伝え継ぐ日本の家庭料理
すし
ちらしずし・巻きずし・押しずし など

著者:日本調理科学会 企画・編集
定価:1,728円 (税込)発行日:2017/11
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:B5変 128ページ

本を購入する(田舎の本屋さん)

お米をたっぷり使うすしは、昔からハレの日のごちそうです。その形、具、すし飯の味は風土で異なります。具に個性が表われるのり巻き、フナやモロコなどの川魚のすし、酢じめの魚や山菜をのせた押しずし、一尾丸ごとから焼き鯖、そぼろまで多彩な鯖ずしなど、さまざまなすしのレシピが掲載されます。

ちらしずし・ばらずし
さまざまな具を混ぜたすし飯の上に具を飾るすしを、主に東ではちらしずし、西ではばらずしや混ぜずしと呼びます。岡山、広島、香川、大分など、瀬戸内海沿岸の地魚や野菜をふんだんに使った、ちょっとぜいたくなばらずしから紹介します。
巻きずし・いなりずし
持ち運びや取り分けしやすい巻きずしやいなりずしは、昔から運動会や遠足の弁当の定番です。巻きずしの具は色と味のバランスが考えられ、切り口は華やか。 油揚げに飯を詰めるいなりずしは全国共通ですが、その形やすし飯の味に個性があります。
にぎりずし
にぎりずしといえば、江戸時代に生まれたファストフード、江戸前ずしですが、家庭では「ひっつけ」などと呼ばれ、手づくりしてきました。ただし、具は「漬け」や酢じめの魚、煮含めた川魚、山菜などさまざまで、その地域でたくさんとれたものを素材にしています。
葉のすし
柿の葉や笹など、身近な木や草の葉を使ったすしです。 葉っぱは包んだりはさんだりと、食器や仕切りになり、また、抗菌作用がある葉の場合は保存性も増します。 そしてすしに彩りを添えて季節を感じさせることで、よりおいしくするのです。
押しずし・箱ずし
箱や枠、桶にすし飯を入れて押すので、すし飯と具がよくなじみ、ご飯がたっぷり食べられるすしです。西日本で多くつくられ、家庭には専用の木枠や箱があります。四角く切り分けたり型で抜いたり、具の飾り方やご飯の詰まり加減にも地域ごとに違いがあります。
姿ずし
魚の姿が丸ごと見えるすしで、尾頭つきのごちそうです。鯖やさんま、いわしなどの青魚をよく使いますが、背開きもあれば腹開きもあり、同じ魚でも見た目が違います。魚と飯を発酵させる「なれずし」タイプも、主にご飯を食べるすしは、ここで取りあげています。

(写真撮影 五十嵐公、高木あつ子、戸倉江里、長野陽一)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

目次

凡例

  • 〈ちらしずし・ばらずし〉
    • ばらずし(岡山県) …… 6
    • どどめせ(岡山県) …… 8
    • ばらずし(広島県) …… 9
    • ばらずし(愛媛県) …… 10
    • ばらずし(香川県) …… 12
    • かちえびちらしずし(大分県) …… 13
    • ちらしずし(東京都) …… 14
    • かて飯(神奈川県) …… 15
    • みょうがずし(富山県) …… 16
    • てこねずし(三重県) …… 17
    • ばらずし(京都府) …… 18
    • 金時豆入りかき混ぜ(徳島県) …… 20
    • すもじ(島根県) …… 22
    • ぶえんずし(熊本県) …… 23
    • ばらずし(宮崎県) …… 24
    • さつますもじ(鹿児島県) …… 25
  • 〈巻きずし・いなりずし〉
    • 巻きずし(群馬県)…… 27
    • 太巻きずし(千葉県)…… 28
    • 細巻きずし(千葉県)…… 30
    • 太巻きずし(神奈川県)…… 31
    • クルミ入り太巻きずし(新潟県)…… 32
    • こぶの巻きずし(奈良県)…… 34
    • わかめすし(和歌山県)…… 36
    • 南関あげ巻きずし(熊本県)…… 37
    • 【コラム】巻きずしのつくり方 …… 38
    • いなりずし(青森県)…… 39
    • いなりずし(茨城県)…… 40 
    • おいなりさん(栃木県)…… 41
    • いなりずし(宮崎県)…… 42
  • 〈にぎりずし〉
    • おぼろずし(千葉県)…… 44
    • 島ずし(東京都)…… 45
    • あじずし(神奈川県)…… 46
    • にぎりずし(静岡県)…… 47
    • いわしのほおっかむり(兵庫県)…… 48
    • じゃこずし(和歌山県)…… 49
    • ままかりずし(岡山県)…… 50
    • 茶台ずし(大分県)…… 51
    • ゆず酢の山菜ずし(高知県)…… 52
    • 魚ずし(宮崎県)…… 54
  • 〈葉のすし〉
    • 笹ずし(新潟県)…… 56
    • 笹ずし(長野県)…… 58
    • 葉っぱずし(福井県)…… 59
    • 朴葉ずし(岐阜県)…… 60
    • 柿の葉ずし(石川県)…… 61
    • 柿の葉ずし(和歌山県)…… 62
    • 柿の葉ずし(鳥取県)…… 63
    • 柿の葉ずし(奈良県)…… 64
    • 鯖のなれずし(和歌山県)…… 66
    • 【コラム】すしを包む・はさむ・のせる葉っぱ …… 68
  • 〈押しずし・箱ずし〉
    • 塩引きずし(山形県)…… 71
    • 押しずし(石川県)…… 72
    • 押せずし(富山県)…… 74
    • 鯖の箱ずし(静岡県)…… 75
    • 箱ずし(岐阜県)…… 76
    • 箱ずし(メジロ)(愛知県)…… 77
    • 箱ずし(モロコ)(愛知県)…… 78
    • こけらずし(三重県)…… 80
    • 宇川ずし(滋賀県)…… 82
    • 鯖ずし(京都府)…… 84
    • 鱧ずし(京都府)…… 86
    • バッテラ(大阪府)…… 87
    • 生ぶしの押しずし(大阪府)…… 88
    • こけらずし(兵庫県)…… 89
    • こけらずし(和歌山県)…… 90
    • 一合ずし(広島県)…… 92
    • ゆうれいずし(山口県)…… 93
    • 岩国ずし(山口県)…… 94
    • 石切ずし(香川県)…… 96
    • 鰆の押し抜きずし(香川県)…… 98
    • カンカンずし(香川県)…… 99
    • 須古ずし(佐賀県)…… 100
    • 【コラム】押しずし・箱ずしの道具いろいろ …… 101
    • 大村ずし(長崎県)…… 102
    • 酒ずし(鹿児島県)…… 104
  • 〈姿ずし〉
    • 鯖ずし(滋賀県)…… 107
    • さんまのなれずし(和歌山県)…… 108
    • さいらずし(和歌山県)…… 110
    • 鯖ずし(兵庫県)…… 111
    • 鯖の姿ずし(島根県)…… 112
    • ぼうぜの姿ずし(徳島県)…… 113
    • 魚の姿ずし(高知県)…… 114
    • このしろの姿ずし(熊本県)…… 116
    • あじの丸ずし(大分県)…… 117
  •  
    • 「伝え継ぐ 日本の家庭料理」読み方案内 …… 118
    • 調理科学の目1 多様なすしとその地域性 …… 122
    • 調理科学の目2 すし飯の好みに見える地方性 …… 124
    • 都道府県別 掲載レシピ一覧 …… 125
    • 素材別索引 …… 126
    • その他の協力者一覧 …… 127
    • 出版にあたって …… 128

「伝え継ぐ 日本の家庭料理」出版にあたって

一般社団法人 日本調理科学会では、2000年度以来、「調理文化の地域性と調理科学」をテーマにした特別研究に取り組んできました。2012年度からは「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の全国的な調査研究をしています。この研究では地域に残されている特徴ある家庭料理を、聞き書き調査により地域の暮らしの背景とともに記録しています。

こうした研究の蓄積を活かし、「伝え継ぐ 日本の家庭料理」の刊行を企図しました。全国に著作委員会を設置し、都道府県ごとに40品の次世代に伝え継ぎたい家庭料理を選びました。その基準は次の2点です。

①およそ昭和35 年から45 年までに地域に定着していた家庭料理

② 地域の人々が次の世代以降もつくってほしい、食べてほしいと願っている料理

そうして全国から約1900 品の料理が集まりました。それを、「すし」「野菜のおかず」「行事食」といった16 のテーマに分類して刊行するのが本シリーズです。日本の食文化の多様性を一覧でき、かつ、実際につくることができるレシピにして記録していきます。ただし、紙幅の関係で掲載しきれない料理もあるため、別途データベースの形ですべての料理の情報をさまざまな角度から検索し、家庭や職場、研究等の場面で利用できるようにする予定です。

日本全国47 都道府県、それぞれの地域に伝わる家庭料理の味を、つくり方とともに聞き書きした内容も記録することは、地域の味を共有し、次世代に伝え継いでいくことにつながる大切な作業と思っています。読者の皆さんが各地域ごとの歴史や生活習慣にも思いをはせ、それらと密接に関わっている食文化の形成に対する共通認識のようなものが生まれることも期待してやみません。

日本調理科学会は2017 年に創立50 周年を迎えました。本シリーズを創立50 周年記念事業の一つとして刊行することが日本の食文化の伝承の一助になれば、調査に関わった著作委員はもちろんのこと、学会として望外の喜びとするところです。

2017 年9 月1 日一般社団法人 日本調理科学会 会長 香西みどり

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